才川夫妻の恋愛事情
思い出してもしょっぱい記憶だった。
ラブラブか!
心の中で先輩に毒づく。あーもう無理。無理無理。そりゃあんな風に自分のことを見ててくれる人がいるなら、大事にしたくもなるだろう。
「当て馬に使うなんて最低」と才川さんに言いながら、当て馬にさえなれないこともわかっていた。
二件目のバーも私は酔ったままで、たまに才川さんから惚気を打ち込まれながらくだらない応酬をした。好きになっておいてなんだけど、意外とこの人デリカシーない……。告白してきた後輩にここまで嫁の話をしてくるだろうか普通。それさえも、完全に私を諦めさせるための策なんだろうか。嫁からすれば、浮気の心配のない良い夫なんだろうけど。
素敵なご夫婦です、さすが才川夫妻。ご馳走様です。…………そう言えば、結局二人は本当に夫婦だったんだろうか?
最後の聴き取り調査と謳っておいて白黒つけられず、この件は迷宮入り――――かのように思えましたが。
その答えは、(私が二日酔いで苦しむことになる)翌日。
思いがけない形で知ることになるのです。