才川夫妻の恋愛事情
朝、目が覚めるといつも通り。私は自分のベッドで眠っていた。
「……あれ?」
ぼんやりと昨晩のことを思い出す。
昨日夜遅くに、野波さんと飲みに行っていた才川くんが帰ってきた。才川くんがふざけて色々囁いてきて、私が怒って、少し話をして。……話をしたものの、わからなかったことは結局わからないまま終わったんだった。
それなのに。
「……」
思い出すと布団に埋まりたくなる。一体何だったんだろう昨日のエッチは……。
いつもと全然違っていた。いつも、というほどしていないけど。でも記憶にあるものとはまったく違う。才川くんは宣言通り一回だけ私を抱いた。その一回はすごくゆっくりだった。激しくもなくて、意地悪でもなくて。ただひたすら気持ちよくさせようとしてくれているのがわかって無性に照れた。〝抱きたい〟なんて言うからひどくされるのかな、なんて構えていたのにずっと優しくて、黙って動きながらキスばかりして。唇が腫れるかと思うくらい……。
頑張って最後のほうを思い出そうとするのに、どうしても記憶がおぼろげだ。終わったあと才川くんは抱きしめてくれていた気がするんだけど。