才川夫妻の恋愛事情
「才川くん」
「ん? なに、花村さん」
「もしかして今日午後何か予定ありますか?」
「え?」
才川くんは少し驚いた顔で手を止めてこちらを見た。その反応にこっちが少し戸惑ってしまう。
「いえ、レポート作るのが早いなと思って……。何か作業が詰まってるなら、こっちまわしていただいて大丈夫です」
「あぁ……。いや、平気。ありがとう。花村さんは?」
「え?」
「今日の午後って、時間固定の案件ある?」
「ないですよ。新聞の入稿も今日はないですし……。午後は溜まってきた広告素材を整理しようかなと思ってたくらいです」
「そう」
「……ん?」
「え?」
「や、何か頼んでいただいても大丈夫ですよ?」
「いや、いいよ。平気だって。何もないなら、午後はそのまま空けといて」
「……はい?」
不思議なことを仰る。やっぱり最近の才川くんは変だ。
隣の席の彼をちらちら訝しむ目で見ながら、私は午前中の自分の仕事に取りかかる。
しばらくすると才川くんの席に野波さんがやってきた。
「才川さん」
「あぁ、野波さんおはよう」
「おはようございます。昨日、ありがとうございました」
「いーえ、お疲れでした。……顔色悪くないか?」
才川くんがそう言ったので、気になってちらりと二人のほうを見た。……確かに。野波さん、顔が白い……。