才川夫妻の恋愛事情
「二日酔いです……ハイパーグロッキーです……逆になんで才川さん平気なんです?」
「いや、昨日は俺も酔ってたよ。家に帰ったときはフラフラだった」
嘘つき。
「フラフラの才川さんって想像できませんね。……それで、ええと、私……。酔ってて記憶確かじゃないですけど、まぁまぁ失礼なこと言いましたよね? 才川さんに」
「はは」
「すみませんでした……」
「二十回くらい〝むかつく〟って言われたかなぁ」
「ごめんなさい……!」
「いいよ、また行こ。今日は一日水分しっかり取って酒抜けよ」
「はい……」
ありがとうございました、とお辞儀して野波さんは自分の席に戻っていった。二人の会話があまりに楽しげな雰囲気で、私はついこぼしてしまう。
「……むかつく才川くん」
「ん? 何?」
「楽しかったみたいで良かったです、昨日。後輩に〝むかつく〟連呼されるなんて、一体どんな話したんですか?」
「……別に気にならないんじゃなかったっけ?」
そう言って薄く笑われると、私はうっと詰まってしまう。そんな家で言ったようなことを引き合いに出してくるのずるい。「そうでした」と笑って私はまた自分の手元の作業に戻る。
隣で小さく笑う声が聴こえて、つられてまた彼のほうを向いてしまう。