才川夫妻の恋愛事情


不思議に思いながら白い大きめの箱を受け取ると、中身が花だからかとっても軽かった。それをひょいと後ろにいた才川くんに奪われる。



「え」

「持つからドア、ロック開けて」

「あ、うん。ありがとう……?」



それなら才川くんがドアを開けてくれたらいいのに、と思いながら言われた通り社員証をかざしてドアを開ける。先に中に入ってドアを押さえていると、才川くんは箱を抱えたまますたすたと二課の自分のデスに向かって歩いていった。

私は小走りで後ろを追いかけて尋ねる。



「それ、誰が注文したか知ってます? 私頼んだ覚えがないんですけど、宛名には〝二課〟としか書かれてなくて」

「うん、大丈夫」



知ってる、と言って彼はその箱を自分のデスクに置いた。かと思うと、そのまま中を開け始めた。私は隣に立ったままぽかんとそれを見つめる。



「……もしかして才川くんが頼んだ?」

「そう」

「珍しい……お花の手配なんていつも任せてくれるのに。急ぎでしたか」

「まぁまぁ」

「んん……?」



何か濁すような物言いに違和感が残る。中から取り出されたバラは色濃く真っ赤で、本数も多いボリュームのあるものだった。箱から出てきた瞬間に小さく〝うわ……〟と声をあげてしまったくらい。



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