才川夫妻の恋愛事情
珍しいことにドキドキしながら、なるべく平静さを保って問いかける。こんなことするの、会社での才川くんみたいで。……もしかして本当に酔ってる? と思ったけどそれはない。彼はザルだ。一件目で酔うことなんてまずない。
背中にお風呂あがりのあったかい体温を感じながら、首の裏を彼の拭ききれていない髪の水気で濡らされていく。自分と同じシャンプーの香りがして一気に心拍数が上がった。お腹の前にまわされた腕の逞しさに思わずときめいた。
今更、ときめいた。
「俺が帰ったあと、誰にも絡まれなかった?」
才川くんが訊いてきたのは、そんなこと。
「絡まれてない……。竹島くんが心配してくれたよ、人前であんなことされて大丈夫かって」
「さすが竹島、お節介」
「……信じらんない」
「ん?」
「才川くん、舌入れたでしょ」
後ろを振り返ってきっと睨むと、才川くんはきょとんとして、笑った。
「ちょっと応えてたくせに」
「っ」
「なぁ、みつき。……人前でキスされて感じた?」
「……あっ」
するりと温かな手が下肢へと伸びて、スカートの中の内腿に触れる。不意を突かれたその動きに反射的に身をよじった。けれどさっきときめいた、逞しい腕は私を逃がしてくれない。