才川夫妻の恋愛事情
半分泣いていた。こんなのあんまりだと思う。なんで彼は、こんなに言わせたがるんだろう。
ここまでずぶずぶに心も溶かされて、今更やめられなかった。首に腕をまわして抱きしめながら浅い息の漏れる唇を彼の耳元に運ぶ。
「――――」
思い切って囁くと才川くんはばっと私の口から耳を離した。
「……そ、れは。お前っ」
「んっ」
「そこまで言えって言ってない……びっくりした……っ」
「ふ、ん……!」
また唇を塞がれた。
〝ちゃんと俺のものにしたい〟と彼は、お昼にそう言っていた。
ちゃんとって、何なんだろう。今までは違ったのかな。これから何が変わるんだろう。
彼の言葉はまた新しい疑問を生みはしたけれど、一つも不安にはならなかった。やっぱり愛されてるなぁという実感だけが、いつも色濃く自分の中に残される。
「才川くっ……あっ、やだっ……もうっ……」
膝の上で、私は才川くんにしがみついて強くねだった。
欲しくて欲しくてたまらない。……と思ってることが、ちょっとでも彼に伝わればいいなと思う。
「はッ……」
けれど息を乱しながら才川くんは。
「ん」
ちゅっと最後に私の口を吸って、唇を離すと笑って言った。
「――――しないよ」
「え」
「これで終わり」
「………………えぇ!?」
彼は、ブレないドSだった。