才川夫妻の恋愛事情
才川夫妻の小ネタ集

同期の結婚式当日。家で支度をしていると、みつきが「じゃーん!」とドレス姿を披露する。
髪をアップにして、淡い水色のドレスはノースリーブで首元にパールのビジュー。リボンでウエストを縛るデザイン。

ドキドキした面持ちで「かわいい?」と訊いてくる。その顔が明らかに期待していたので、意地悪がしたくなった彼は本音とは裏腹に、「あーうん、かわいいかわいい」と適当に返した。

てっきり「もっとちゃんと褒めて!」と怒られるかと思ったら、嬉しそうにふふっと笑うので。


(え、こんなのでいいんだ……)


機嫌よく笑うみつきを尻目に、くそかわいいな……と思いつつ「綺麗だ」と言い損ねてしまう。 (嫁に萌えたなんて口が裂けても言えない)






*






前の晩何回戦続いたか記憶が怪しい朝。じんじんと痛む腰がつらすぎてベッドから出られない私は、早々にシャワーを浴びてYシャツに腕を通している彼を睨んだ。



「……才川くん!」

「ん?」

「もう少し限度を! 考えて!」

「限度?」

「なんか……なんていうか、最近……ねちっこいというか……」



腰が痛いの。次の日も仕事があるときにこんなのは困るの。

それだけを伝えたかったのに、選ぶ言葉を間違えた。“ねちっこい”が気に障ったのか、才川くんはくるっと私のほうを向くとYシャツのボタンを留めながらじっと黙って私の目を見た。



「……」

「……」



あぁまずい怒らせたかもしれない……。

ごめん言い過ぎたかも、と言おうとしたとき彼が先に口を開く。



「あぁそう。俺とのエッチ不満だったんだ?」



「……」



そう言われて、私はベッドの中で両手で顔を覆う。



「嘘ですとっても気持ちよかったですありがとうございました……!」

「よろしい」






*





友人の猫を預かることになったみつき。



「共働きなのに?」

「有休をとりました!」

「……」

「猫休暇です。というわけで、お休み中はご迷惑おかけします」

「……」



猫を腕に抱きながらぺこりと頭を下げるみつき。
才川くんは「あっそ」と言って気のない素振りだった。

しかし翌日。



「……才川くん?」

「なに?」

「なにじゃないですよ、なんでまだ家にいるの会社は……?」

「有休とった」



そう言って、猫の首裏を撫でる。ゴロゴロと喉を鳴らす猫にずっと構ってる。



「……才川くん、ほんとは猫好きでしょ」



呆れる嫁。 結局、猫は二人で可愛がることに。



「うちも猫、飼ってもいいけど」

「え?」

「共働きだけど毎日帰ってくるし、面倒は見れるだろ」

「……うちはおっきい猫一匹飼ってるからもういいかな……」

「は?」

「なんでもないですよー」




才川くんは気まぐれコタツ依存の猫舌男子です。


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