才川夫妻の恋愛事情




「才川とみっちゃんのこと? うん、同期だよ」

「……みっちゃんというのは花村さんのことですよね?」

「あ、ごめん。うちの同期なぜか女子だけみんなあだ名なんだよねぇ」



本当に普段から花村さんのことをみっちゃんと呼んでいるようで、葉山さんはとても自然にそのあだ名を口にしていた。そう言えば、葉山さんを紹介してくれた竹島さんも葉山さんのことを〝はやまん〟って呼んでたなぁ、と思い出す。同期の仲が良くて羨ましい。私たちもこういう風になるんだろうか?

葉山さんは前まで営業にいたそうだが、今は広告媒体を担当する部署に移っていて雑誌の広告枠の発注や掲載ページの調整をしている。……と、松原さんがなぜか面白くなさそうに教えてくれた。

トレーナーの先輩ながらあの人、社内に一体何人曰くつきの人がいるんだろう。この間も才川さんにガン飛ばしてたしな……。元ヤンなのかな……。



松原さんは得意先に呼ばれて出ていって、私は電話番を任されていた。ちょうどそこに営業と打ち合わせをしていた葉山さんが通りかかったので私が声をかけた。最近の私はすっかり〝才川夫妻〟調査員だ。

最初は立ち話をしていたが、私が質問していろいろ訊きたい姿勢を見せると葉山さんは松原さんのデスクに腰かけた。しゃべる度にミルクティー色のセミロングの髪が揺れる。



「この間の歓迎会、ひどかったって聴いたけど。才川が居酒屋でみっちゃんにキスしたって」

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