才川夫妻の恋愛事情
その挑発的な目は、絶対に面白がってますよね? だから私は面白くない。
会社ではベタベタに甘やかして、動揺させて。
家では圧倒的に優位で、翻弄して。
私の反応を見て面白がっているんでしょう? 知ってます。
見くびらないでほしい。
何年、あなたの妻をしてると思っているの、私が。
ギシッとソファを軋ませて、横たわる彼の上を陣取る。邪魔になる髪を自分の片手でまとめて、そっと首筋に唇をよせた。
「……そんな見えるとこにつけたいの?」
才川くんの声は笑っている。
「会社で疑われるのは花村さんだと思うけど」
「……」
「ほんとのことだから、いいのか」
「……才川くんちょっと黙ってて」
「はい」
邪魔な髪はもう背中のほうへぜんぶ流して、彼の両肩を掴んだ。シャツの内側にある清潔な首筋に吸い寄せられるようにして、何度もそこに口付ける。吸い付くと少しだけ彼の身体が反応したような気がして、もっとはっきりとした痕を残したい欲が膨れ上がる。最終的に、片手で彼の襟足を押さえて噛みつくように首にキスをしていた。
その間も彼は私の髪を撫でていた。
しばらくして、顔を上げてはぁっと息を吸い込む。彼の首筋には目が覚めるような赤さのキスマークがついていた。