才川夫妻の恋愛事情
「まぁ、普通に考えればさ。同じ部署になって接点が増えて、気に入っちゃったってだけなんだろうな」
「そんな普通にまとめちゃったら面白くないじゃないですか」
「面白くないって、先輩に何を求めてるんだこの新人は……。そこまで面白い事実は隠れてないと思うけどなぁ。でもまぁ、一時期付き合ってたとか、そういう証拠がつかめたら酒の肴くらいにはなるか?」
「そうでしょうそうでしょう。美味しいお酒を飲むための投資と思って、これからも情報提供してくださいね♪」
「怖ぇ……。もっちーと同じ怖さを感じるよお前……」
おぞましいものを見るような目を向けられながら、そう言えば望田さんにはまだ話を聴いていなかったなと思いだす。戦略部門の望田さんも、竹島さんたちの同期だという。まだ私は直接話したことがないけれど噂だけは耳にしていた。役員を含むほぼ全社員の弱みを握っている、東水広告社一の情報通……。もしかしたら彼女に訊けば、私の疑問は大方すっきりしてしまうのかもしれない。
それ一発ですべてが明らかになってしまうのもつまらない気がするけれど、次に話を訊くなら望田さんかなぁ、なんてあたりをつけていたら。竹島さんがふいと顔を動かす。
「お、噂をすれば。才川夫妻のご出社だ」