才川夫妻の恋愛事情



言われて竹島さんの視線の先に目を向けると、そこには確かに今エレベーターホールから出てきたばかりの二人がいた。スーツ姿の才川さんと私服の花村さん。時刻は始業の五分前。

いつもなら、花村さんはもうとっくに制服に着替えて視聴率チェックを始めている時間だ。珍しい……。花村さんの私服姿を眺めながら、足早にこちらに向かってくる二人に挨拶をしようとした時。先に竹島さんが口を開いた。





「なんだ才川夫妻。ラブホから仲良く出社か?」

「ちょっと! 竹島さん!」



突然何を訊いてるんですか!



グッジョブです!



すました顔で挨拶をしようとしながら、私は内心気になって気になって仕方がなかった。どうしてこんなギリギリの時間に、二人そろっての出社なのか。でも流石にそんな露骨なこと、先輩に向かって訊けないので。

きょとんとして足を止めた二人に竹島さんが畳みかけた。



「昨日は合コンがどうとかって喧嘩してたらしいし? 夜は仲直りでさぞ燃えたんだろうなぁ」



……下衆だなぁ。横目で竹島さんをチラ見しながら、それでも興味津々で私は二人の反応を待つ。何て答えるんだろう? 二人が偶々そこで会ったんだとは、思えない。



才川さんはけろっとした顔で言った。



「バレたか」

「才川くん!」



後ろにいた花村さんが慌てて〝バレたかじゃないですよ!〟と抗議すると、才川さんは花村さんを振り返った。そして――――彼女の頭をそっと自分のほうへ抱き寄せて、耳元に囁く。甘い声で。







「花村さん。……昨日、よかった?」


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