才川夫妻の恋愛事情

竹島くんは面白がって畳みかけてきた。



「昨日は合コンがどうとかって喧嘩してたらしいし? 夜は仲直りでさぞ燃えたんだろうなぁ」

「……」



下衆すぎて開いた口が塞がらなかった。なに。なんなの竹島くん。この間は親身になってくれたじゃない。居酒屋で才川くんにキスされた私に〝困ってるなら俺から話そうか?〟って言ってくれたじゃない。それを何、余計なことを!



嫌な予感しかしなかった。

その予感通り、私の前にいた才川くんはさらりと言ってのけた。



「バレたか」

「才川くん! バレたかじゃないですよ!」



時間がないのに! と思って心の底から抗議すると、彼は振り返った。



(あ)



視線の合図。演技だ。かち合った目は〝ノるぞ、合せろ〟と言っていた。……時間がないんだってば……!
私も目で訴えてみたけれど一瞬で棄却されて、大きな手がまっすぐ伸びてきた。頭をそっと抱き寄せられて、甘い声が耳の中に響く。



「花村さん。……昨日、よかった?」



――ぞくっとして、正直脚がすくんだ。

……昨日は気分じゃないって断られてなんにもなかったですけどね! ふてくされた気持ちでごまかして、彼に合せたセリフを吐く。



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