才川夫妻の恋愛事情
「才川くん……」
もう一度犯された気分だった。
色々思い出してしまって自分の脚で立っているのもつらくなる。彼はそんな私の様子も察してふっと笑った。――きっとまた、しばらくは抱いてもらえないのに。
「うるせぇノってんじゃねぇ! 花村も! もう着替えないと遅刻だぞ」
「っ、わかってるなら振らないで!」
その指摘に時間のことを思い出した。立っていられないなんて言ってる場合じゃない。するりと才川くんの腕の中から抜け出て更衣室に走る。
あぁもう台無し。
才川くんと噂される花村さんはもっとずっと淑女でイイ女でいたかったのに、朝からこんなに走っちゃって、台無し。
「……竹島くんのバカ!」
最後にそう捨て置いた。
飛び込んだ更衣室は当たり前だけど誰もいなかった。もう始業時間に間に合わない。急いで私服を脱ごうとしてブラウスが頭で引っかかる。
体がとっても熱かった。
余韻。
激しく求められた朝の余韻。
恥ずかしくて幸せで死んでしまいそうだ。
……でもなんだか最近の才川くんは、攻め方がえっちです。こういうのはだいぶ困る。
なんとかしなきゃと考えて、始業のチャイムを聴きながら制服に袖を通した。