才川夫妻の恋愛事情

「望田さんは、あの二人が何か隠してると思いますか?」

「思うよ~だってどう考えてもおかしいでしょ、会社であんなにイチャイチャしまくってるの。あの二人が、っていうより……隠してるのはみっちゃんなんじゃないかなって」

「花村さんがですか……?」



妙に確信めいた言い方に吸い寄せられる。望田さんはもったいぶってまたペペロンチーノを口へ運ぶと、緩慢な仕草でナフキンで口を拭いた。……なんかもうこの人さっきから! ちょっとやりにくい!

さっさと話してくださいと言いたい気持ちを胸の中に押し込めてじっと待っていると、望田さんはどこからか一枚の写真を取り出した。……ほんとに今どこから出てきた? 得体の知れなさに怖くなる。



「同期の秘密だからそっとしておいたんだけど……見込みある新人にだけ特別に見せてあげる。ここにとある結婚式の写真があります」

「結婚式……?」



既に完食したパスタのお皿の横にずいと出された一枚の写真。

そこに写っていたのは才川夫妻だった。



「……かわいい」



写真の中で困ったように笑う花村さんを見て思わずそう零した。普段は制服姿を見ることが多い花村さんが、髪をアップにしてパーティードレスで着飾っている。淡い水色のドレスはノースリーブで首元にパールのビジュー。リボンでウエストを縛るそのデザインは彼女の雰囲気によく似合っていた。

その隣で、よそ見をしながらワインに口をつけている才川さんが写っている。こちらはいつものスーツ姿。それなのに、髪型が違うだけで全然いつもと違って見えた。格好いい。いつも花村花村ってうるさいキス魔だとは思えない……。
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