才川夫妻の恋愛事情
それで一体望田さんは何を言いたいのかという話だ。
「神谷とはやまんの結婚式で元気が無くて、それをごまかすように笑って見せるみっちゃん。ここから言えることは一つでしょう」
「……何ですか?」
「みっちゃんも実は、神谷のことが好きだったんだよ」
どどーん、と望田さんは人差し指をたてて凄んで見せたけれど。
「……」
……それは違うんじゃないかなぁ……。
だってそんな気配を感じる瞬間なんて一度もなかった。そもそも二人が話しているのを見たことがない。私が新入社員だからそうなだけで、同期として過ごしてきた時間の中にはあったということなんだろうか?
それにしたって。
「……それならどうして花村さんは才川さんと噂になったりするんです? 周りのフリに合わせる意味もわかんないです」
「お子様だなぁ野波。ほんとは神谷のことが好きだったんだけど、同期カップルに割り込む勇気のなかったみっちゃんは結婚式で切ない思いをしてたんだよ。才川夫妻は、みっちゃんの気持ちを隠すためのカモフラージュ。才川はみっちゃんの叶わない片思いを知ってて、みっちゃんがみじめにならないようにずっとああやってゲロ甘に可愛がってるってわけ」
「お話一本書けそうなレベルの妄想ですね……」
「人の弱みは突飛な憶測から見つかるもんだよ」
だから私べつに弱み握りたいわけではないんです……。