才川夫妻の恋愛事情
「……もう、言ってもいいんじゃないかなって思うんですけど」
「何を?」
「私たちが結婚してること、会社のみんなに。もう六年も経ったんだから、流石に誰も生意気だなんて思わないでしょう?」
「……」
才川くんは文庫本をベッドサイドに置いて、少し考えてからこう言った。
「……お前、言えるか?」
「え?」
「六年間も嘘ついてましたって今更、みんなに言えるのか」
「……」
そう言われると言葉が出てこなかった。
……でも、じゃあ、ずっとこのまま?
それは嫌だと思うのに反論する言葉が出てこない。確かに、嘘をついていましたと告白する瞬間のことを思うと胃がキリキリと痛んだ。
「うーん……」
考えて唸りながら目を閉じる。
「みつき」
「はい……?」
「寝るならベッド戻って」
「え」
「お前のベッドはあっち」
そう言って隣のベッドを指さす。
いつもの意地悪な笑い方に、わなわなと震えた。
「……意地悪すぎる!」
「意地悪? 何が?」
「そんな態度ばっかりとるならもう知らないから! 会社で私も素っ気なくして――んッ」