才川夫妻の恋愛事情
「営業二課の才川です。……松原さんの下なんて大変だな」
「才川くん、それはどういう意味?」
「仕事がめちゃくちゃできて優秀な先輩についていくのは大変! って意味ですよ?」
「やだ、ご謙遜? 最年少主任にそんなこと言われたんじゃ立場ないんだけど」
ビリビリと他意を飛ばしあう二人をよそに、女性のほうがにこりと私に微笑んだ。
「二課営業事務の花村です。私はもしかしたら仕事でお手伝いすることがあるかも。社内の手続きとかで困ったら何でも言ってね」
「ありがとうございます」
「才川と花村は私の二つ下。同期同士よ」
そう紹介された二人は笑い方がそっくりだと思った。私はついさっき見た不思議なやり取りが印象に残りすぎていて、二人の間に特別なつながりを見出そうとしている。だから、そう見えただけなのかもしれないけど。思ったままを口に出してみる。
「……ほんとにご夫婦みたいですね」
私がぽつりとこぼした言葉に、松原さんが面白くなさそうに口をはさむ。
「息ぴったりの才川夫婦だからねー」
「いえ、なんと言うか……それだけじゃなくて、雰囲気が」