冬に響くセレナーデ
ある王国で出会い、恋に落ちる王子様とオデット。しかし、オデットは呪いをかけられていて、日中は白鳥の姿で過ごしている。彼女の呪いは、彼女だけに永遠の愛を誓う男性が現れるまでは解けないことになっていた。
ある日、王子の母上の女王陛下がお城で舞踏会を開き、王子が結婚相手をさがして、将来の王女を決めてくれることを願っていた。
王子が姫たちと踊っているところへ、オデットとよく似た女性がやってくる。
彼は彼女と踊り、オデットだと思い込む。そして、愛を誓ってしまった。しかし、その女性は王子を騙すために魔法使いが作り上げた偽者だった。
王子は湖へ走り、オデットに思ってもみなかった裏切りを謝るが、魔法使いが現れ、彼らには絶望の道しかないことを告げる。
オデットは呪いを解くには、白鳥の姿に戻る前に命を絶つことしかないと言い、王子も彼女と一緒に逝くことを明言した。
悲しい結末を迎える二人。美しすぎる、儚い死。死をもって、幸せになるー。
私が観た白鳥の湖はハッピーエンドではありませんでした。
「悲しい白鳥の湖だったね。」
「はい、でも私はこの結末のほうが好きです。」
「僕も。音楽も最後に命を絶つほうがしっくりくるよね。」
「はい。でも、オデットもジークフリート王子も死んで幸せになれるでしょうか?」
「死んでしまうことで、永遠に一緒にいられるんだと思う。それは二人にとって幸せじゃないのかな?」
「すごく愛し合っていたんですね。」
「そうだね。」
「そんな愛を経験したことはありますか?」
「まだないなぁ。」
少し照れながら俯きかげんに呟いたあと、こう言った。
「ねえ、まだ早い時間だけど、このあとどうする?」
「お茶でも飲みましょうか?」
彼は熱いコーヒーをお店でテイクアウトした。
「ちょっと寒いけれど、良いところへ行こう。」
彼の車に乗り込むと、海岸とは反対の方向へ走り出した。
「どこへ行くの?」
「秘密。着いてからのお楽しみ!」
彼はどんどん丘の上を登ってゆき、とうとう頂上まで来てしまった。この辺りはバスでは来ることができないので、私は初めてだった。
「ヒルズだよ。」
「でも、ゲートが閉まっているみたいですよ。」
「大丈夫!鍵はないはずだから。」
私たちはゲートを開け、低い柵を越え、少々歩いた。
「目を閉じて。」
「危ないわ!」
「僕を信じて。」
「オーケー。」
手を繋ぎ、不安定な足元に注意しながら進んだ。草むらは少し濡れていて、風は頬を刺した。
「いいよ。」
静かに目を開けると、美しい光景が目に飛び込んできた。沈みゆく太陽と夜空が混じって美しいグラデーションをつくる。
「うわぁー、綺麗!」
「真ん中がコンサートホール、右手に海岸、左手に空港が見えるよ。」
オレンジ色の光が全体に広がり、所々に赤や緑や白や青の光が輝いて見える。
「桟橋が七色になってる!」
「期間限定でライトアップするんだ。」
「素敵…。」
ニコラスは私の背後にまわると、そっと抱きしめてくれた。
「寒いね。」
「はいー。」
夕日はどんどん地平線に吸い込まれてゆく。
「I have feelings for you.」
「どういう意味?」
本当に、自分の理解力に嫌気がさす。
「それはね、君を好きだってこと。」
「どういう訳か、前から感じてた気がする。」
「ははは、そっか。言う必要はなかったかな?」
「ううん、教えてくれて、ありがとう。」
「戻ろうか。」
「はい。」
車はとても暖かかった。冷え切った体にコーヒーが染み渡る。
「よかったでしょう?」
「ええ、とっても!この街がこんなに綺麗だなんて、知らなかった!」
「喜んでもらえて嬉しいよ。そろそろ帰ろうか?」
「そうですね。」
ニコラスはきちんと家まで送り届けてくれた。
ある日、王子の母上の女王陛下がお城で舞踏会を開き、王子が結婚相手をさがして、将来の王女を決めてくれることを願っていた。
王子が姫たちと踊っているところへ、オデットとよく似た女性がやってくる。
彼は彼女と踊り、オデットだと思い込む。そして、愛を誓ってしまった。しかし、その女性は王子を騙すために魔法使いが作り上げた偽者だった。
王子は湖へ走り、オデットに思ってもみなかった裏切りを謝るが、魔法使いが現れ、彼らには絶望の道しかないことを告げる。
オデットは呪いを解くには、白鳥の姿に戻る前に命を絶つことしかないと言い、王子も彼女と一緒に逝くことを明言した。
悲しい結末を迎える二人。美しすぎる、儚い死。死をもって、幸せになるー。
私が観た白鳥の湖はハッピーエンドではありませんでした。
「悲しい白鳥の湖だったね。」
「はい、でも私はこの結末のほうが好きです。」
「僕も。音楽も最後に命を絶つほうがしっくりくるよね。」
「はい。でも、オデットもジークフリート王子も死んで幸せになれるでしょうか?」
「死んでしまうことで、永遠に一緒にいられるんだと思う。それは二人にとって幸せじゃないのかな?」
「すごく愛し合っていたんですね。」
「そうだね。」
「そんな愛を経験したことはありますか?」
「まだないなぁ。」
少し照れながら俯きかげんに呟いたあと、こう言った。
「ねえ、まだ早い時間だけど、このあとどうする?」
「お茶でも飲みましょうか?」
彼は熱いコーヒーをお店でテイクアウトした。
「ちょっと寒いけれど、良いところへ行こう。」
彼の車に乗り込むと、海岸とは反対の方向へ走り出した。
「どこへ行くの?」
「秘密。着いてからのお楽しみ!」
彼はどんどん丘の上を登ってゆき、とうとう頂上まで来てしまった。この辺りはバスでは来ることができないので、私は初めてだった。
「ヒルズだよ。」
「でも、ゲートが閉まっているみたいですよ。」
「大丈夫!鍵はないはずだから。」
私たちはゲートを開け、低い柵を越え、少々歩いた。
「目を閉じて。」
「危ないわ!」
「僕を信じて。」
「オーケー。」
手を繋ぎ、不安定な足元に注意しながら進んだ。草むらは少し濡れていて、風は頬を刺した。
「いいよ。」
静かに目を開けると、美しい光景が目に飛び込んできた。沈みゆく太陽と夜空が混じって美しいグラデーションをつくる。
「うわぁー、綺麗!」
「真ん中がコンサートホール、右手に海岸、左手に空港が見えるよ。」
オレンジ色の光が全体に広がり、所々に赤や緑や白や青の光が輝いて見える。
「桟橋が七色になってる!」
「期間限定でライトアップするんだ。」
「素敵…。」
ニコラスは私の背後にまわると、そっと抱きしめてくれた。
「寒いね。」
「はいー。」
夕日はどんどん地平線に吸い込まれてゆく。
「I have feelings for you.」
「どういう意味?」
本当に、自分の理解力に嫌気がさす。
「それはね、君を好きだってこと。」
「どういう訳か、前から感じてた気がする。」
「ははは、そっか。言う必要はなかったかな?」
「ううん、教えてくれて、ありがとう。」
「戻ろうか。」
「はい。」
車はとても暖かかった。冷え切った体にコーヒーが染み渡る。
「よかったでしょう?」
「ええ、とっても!この街がこんなに綺麗だなんて、知らなかった!」
「喜んでもらえて嬉しいよ。そろそろ帰ろうか?」
「そうですね。」
ニコラスはきちんと家まで送り届けてくれた。