冬に響くセレナーデ
11
今まで感じたことのないほど、この1カ月はあっと言う間だった。
私は散策し、音楽を聴き、ソーセージをたらふく食べて、少しばかりのドイツ語をニコラスから習い、たくさん寝た。
「あと、2日しか一緒にいられないね。」
「早かったね。」
名残惜しそうに彼は呟いて、私の手をとった。
「寂しくなるよ。」
手と手を絡める。薬指の指輪同士が触れ合い、冷たい音がした。
「おいでー。」
潤む瞳は縁がほのかに赤くなり、こちらを真剣に見つめている。
私たちはそっと唇を合わせ、ゆっくりと深い歓喜に溺れていく。
「ニコラスー。」
言葉にならない叫びが胸の奥から溢れてくる。
「ねえ、ニコラス、ずっと傍にいて…。」
「いるよ、君が望む限り、ずっと。」
「うん…。」
この夜、私たちが眠ることはなかった。
朝、ニコラスがヴァイオリンを弾いている。なんの曲だろう?少し寂しくて、でも、幸せに満ちた、優しい愛の歌。
隣の部屋で奏でられる音色を私はずっと聴いていた。そして、いつしかまどろみの世界へ戻っていった。
土曜日、空港は混み合っていた。
「次はいつ逢えるかな?」
「夏に、日本に寄るよ。」
「うん。」
「受験勉強、頑張るんだよ。」
「うん。」
「奏美、連絡してね?」
「もちろん、ニコラスも勉強頑張ってね。」
「そうだね。」
私はいつも離れる時に泣いてしまう。
「すぐに電話するから…寂しくないようにー。」
「うん。」
「じゃあ、またね。」
「またねー。」
私が去るのは初めてだった。
私は散策し、音楽を聴き、ソーセージをたらふく食べて、少しばかりのドイツ語をニコラスから習い、たくさん寝た。
「あと、2日しか一緒にいられないね。」
「早かったね。」
名残惜しそうに彼は呟いて、私の手をとった。
「寂しくなるよ。」
手と手を絡める。薬指の指輪同士が触れ合い、冷たい音がした。
「おいでー。」
潤む瞳は縁がほのかに赤くなり、こちらを真剣に見つめている。
私たちはそっと唇を合わせ、ゆっくりと深い歓喜に溺れていく。
「ニコラスー。」
言葉にならない叫びが胸の奥から溢れてくる。
「ねえ、ニコラス、ずっと傍にいて…。」
「いるよ、君が望む限り、ずっと。」
「うん…。」
この夜、私たちが眠ることはなかった。
朝、ニコラスがヴァイオリンを弾いている。なんの曲だろう?少し寂しくて、でも、幸せに満ちた、優しい愛の歌。
隣の部屋で奏でられる音色を私はずっと聴いていた。そして、いつしかまどろみの世界へ戻っていった。
土曜日、空港は混み合っていた。
「次はいつ逢えるかな?」
「夏に、日本に寄るよ。」
「うん。」
「受験勉強、頑張るんだよ。」
「うん。」
「奏美、連絡してね?」
「もちろん、ニコラスも勉強頑張ってね。」
「そうだね。」
私はいつも離れる時に泣いてしまう。
「すぐに電話するから…寂しくないようにー。」
「うん。」
「じゃあ、またね。」
「またねー。」
私が去るのは初めてだった。