冬に響くセレナーデ
12
帝都音楽大学の受験が始まる。声楽演出家コースの課題はカッチーニのアマリッリだった。
外国語はTOEICがほぼ満点だったので免除され、他の科目に集中できたので良かった。ピアノの課題もなんとかなった。
後は、運に任せるしかない!
私は1年間ニコラスとも逢わずに、血の滲むような努力をしてきた。真剣に音楽と向き合い、真剣に声楽を勉強した。
ーニコラス!聞いて!私、合格したのよ!
ーおめでとう!一番聞きたかった言葉だよー!
ーありがとう、私、頑張ったよ。
ー知っているさ!
ーみんなより遅れたスタートだけど、これからとっても楽しみなの。
ー早いか遅いかは問題じゃないよ。問題は、自分に正直でいられるかどうかだよ。
ー正直?
ーそう、正直でいることができなければ、人は真実と自由を得ることができなくなるからね。
ー私は正直なの?
ーそうさ!自分のやりたいことに忠実だろう?
ーうん。
ーさて、僕も正直にならなくちゃ!
ー何をしたいの?
ー君に逢いたいよ!
ー私も!
その夏は両者とも多忙で逢えなかった。
私はオーボエの時と同様、すぐに頭角を現し、いつしか学生でトップの歌手となっていた。
練習は厳しく、課題も多く、毎日がいっぱいいっぱいで、次第に連絡が疎かになっていった。
二度目の夏、私は音楽祭に参加した。ニューヨークで行われたこの夏期講習は、世界的に有名な音楽家たちが講師となり、ソロだけではなくアンサンブルなども総合的に指導する、とても有意義なものだった。
「奏美?」
「ジハン?」
「やっぱり、そうだ!元気そうだね!」
「嬉しい!覚えていてくれたの?」
「もちろん!まさか君も音楽祭に来てるとは!何を専攻してるの?」
「私は声楽。ジハンはチェロよね?」
「そうだよ。声楽の子たちとは会う機会がないのに、こんなところで会うなんてびっくりだよ!」
「本当ね!」
「偶然はあるものだね。そうだ、最終日の演奏会、良かったら見に来てよ!」
「いいわね!何を演奏するの?」
「シベリウスのカレリア組曲。」
「私、それ大好きなの!楽しみにしてるね。」
最終日、私はコンサート会場に来ていた。
一曲目が終わる。いよいよ、私の大好きなバラードが始まる。
SSSOで演奏してから、私はこの曲を気に入っていた。いつだって、この曲を聴くと音楽に関わっていて良かったと思える。
演奏は素晴らしかった。私は、自分もこんなふうに音楽を奏でたいと思った。
その年の冬、ニコラスからこんなメールが届いた。
ー奏美、元気かな?暫くぶりだね。僕は最近とっても忙しいよ。実は、学校のオーケストラのコンサートマスターになれたんだ。だからね、ソロがすごく多くて、練習ばかりの毎日だよ。それに、クリスマスシーズンは演奏の機会が多いから、もっと大変だよ!
君はどうかな?頑張ってる?寒いだろうから、風邪をひかないようにね! いつでも君のことを想う ニコラスより
私は多分、返信したと思う。しかし、確かではなく、それに、ニコラスからの返事はなかった。
外国語はTOEICがほぼ満点だったので免除され、他の科目に集中できたので良かった。ピアノの課題もなんとかなった。
後は、運に任せるしかない!
私は1年間ニコラスとも逢わずに、血の滲むような努力をしてきた。真剣に音楽と向き合い、真剣に声楽を勉強した。
ーニコラス!聞いて!私、合格したのよ!
ーおめでとう!一番聞きたかった言葉だよー!
ーありがとう、私、頑張ったよ。
ー知っているさ!
ーみんなより遅れたスタートだけど、これからとっても楽しみなの。
ー早いか遅いかは問題じゃないよ。問題は、自分に正直でいられるかどうかだよ。
ー正直?
ーそう、正直でいることができなければ、人は真実と自由を得ることができなくなるからね。
ー私は正直なの?
ーそうさ!自分のやりたいことに忠実だろう?
ーうん。
ーさて、僕も正直にならなくちゃ!
ー何をしたいの?
ー君に逢いたいよ!
ー私も!
その夏は両者とも多忙で逢えなかった。
私はオーボエの時と同様、すぐに頭角を現し、いつしか学生でトップの歌手となっていた。
練習は厳しく、課題も多く、毎日がいっぱいいっぱいで、次第に連絡が疎かになっていった。
二度目の夏、私は音楽祭に参加した。ニューヨークで行われたこの夏期講習は、世界的に有名な音楽家たちが講師となり、ソロだけではなくアンサンブルなども総合的に指導する、とても有意義なものだった。
「奏美?」
「ジハン?」
「やっぱり、そうだ!元気そうだね!」
「嬉しい!覚えていてくれたの?」
「もちろん!まさか君も音楽祭に来てるとは!何を専攻してるの?」
「私は声楽。ジハンはチェロよね?」
「そうだよ。声楽の子たちとは会う機会がないのに、こんなところで会うなんてびっくりだよ!」
「本当ね!」
「偶然はあるものだね。そうだ、最終日の演奏会、良かったら見に来てよ!」
「いいわね!何を演奏するの?」
「シベリウスのカレリア組曲。」
「私、それ大好きなの!楽しみにしてるね。」
最終日、私はコンサート会場に来ていた。
一曲目が終わる。いよいよ、私の大好きなバラードが始まる。
SSSOで演奏してから、私はこの曲を気に入っていた。いつだって、この曲を聴くと音楽に関わっていて良かったと思える。
演奏は素晴らしかった。私は、自分もこんなふうに音楽を奏でたいと思った。
その年の冬、ニコラスからこんなメールが届いた。
ー奏美、元気かな?暫くぶりだね。僕は最近とっても忙しいよ。実は、学校のオーケストラのコンサートマスターになれたんだ。だからね、ソロがすごく多くて、練習ばかりの毎日だよ。それに、クリスマスシーズンは演奏の機会が多いから、もっと大変だよ!
君はどうかな?頑張ってる?寒いだろうから、風邪をひかないようにね! いつでも君のことを想う ニコラスより
私は多分、返信したと思う。しかし、確かではなく、それに、ニコラスからの返事はなかった。