冬に響くセレナーデ
日曜日は晴れていて、気持ちが良かった。現地で6時に待ち合わせをしていたけれど、私は少し遅れていた。
「遅くなってごめんなさい。」
「大丈夫。さ、入ろう。」
レストランは賑わっていた。料理はとても美味しく、雰囲気も良く、落ち着いて食事ができた。
「奏美ちゃん、今、楽しい?」
「お料理は美味しいし、雰囲気も良いし、楽しいよ。」
「そうじゃなくて、人生、楽しい?」
「うーん、今が一番楽しいわけじゃないけれど、そこそこ充実してるかな?」
「そっか。」
「どうしてそんなこと聞くの?」
「なんかさ、奏美ちゃんはいつも物思いに耽っているように感じてね。」
「そうね、考えることはたくさんあるから。」
「その考え、僕にも教えてくれないかな?」
「え?」
「共有したいんだ。」
「そうなの?」
「うん。」
「ー銀杏の葉ってどんなのかわかる?」
「ああ、わかるよ。」
「あの葉はなぜああいう形をしていると思う?」
「なぜって…。なんでだろう?昔からそういう形じゃないの?」
私は話す気が失せてしまった。昔からそういう形なのは当たり前だ。私はそれに秘められた想いのことを言っているのだ。
「ねえ、僕は奏美ちゃんの考えていることはちっとも理解できないかもしれないけど、ずっと一緒にいてほしいんだ。結婚してくれないか?」
「え?」
「嫌かな?」
「ー。」
透くんは私の微妙な反応に驚いた様子だったので、こう言い訳した。
「ほら、私、これからどんどん良くなると思うし、まだ、そうゆうのは早いかと思って…。」
「そうだよね、僕が焦りすぎたかな?」
「ごめんないー。」
「奏美ちゃん、僕のこと、好き?」
私はそんな風に聞いてくる男性は好きじゃない。
「なんで?」
「いや、なんとなく…。」
はっきりしない男性も好きじゃない。そもそも、この人を好きかどうかなんてわからない。そんな状態でお付き合いするのは、相手に失礼なのではないだろうか。
「ねえ、もう、終わりにしましょう。」
「えっ!どうして?」
「うんざりしたの。自分に。」
「えぇ!」
「ごめんなさい。」
そう言って、シャンパンをひと飲みすると、席を立ってレストランを出た。
「ああ、すっきりした!」
やっぱり、私は透くんを傷つけてしまった。しかも、最低のタイミングで。
私は一生、一人の人しか愛せないのかもしれない。あまりにも素敵な恋だったから、今でも忘れられない。あの夜景も、海も、音楽も。
私は夜の街を歩いた。ニコラスのセレナーデを想い浮かべながら。涙が出てくる。私は26歳になってもなお、18歳のままだった。なんにも変わっていない。
「月と星のランデブー、結局見たことないな。」
日本に戻ってきて8年、私がどれだけ自分自身のことしか考えていなかったのかがわかった。
「最低ね。」
ニコラスはいつだって幻想の世界に住んでいたから、現実社会に戻った私には遠い存在に感じた。
彼と見た鮮明で美しい景色がたくさん蘇ってくる。多感な時期に触れたものは、その後の人生に大きな影響を及ぼすようだった。
「ニコラス、私たちは、今でも繋がっているでしょうか?」
今夜は満月だった。
「遅くなってごめんなさい。」
「大丈夫。さ、入ろう。」
レストランは賑わっていた。料理はとても美味しく、雰囲気も良く、落ち着いて食事ができた。
「奏美ちゃん、今、楽しい?」
「お料理は美味しいし、雰囲気も良いし、楽しいよ。」
「そうじゃなくて、人生、楽しい?」
「うーん、今が一番楽しいわけじゃないけれど、そこそこ充実してるかな?」
「そっか。」
「どうしてそんなこと聞くの?」
「なんかさ、奏美ちゃんはいつも物思いに耽っているように感じてね。」
「そうね、考えることはたくさんあるから。」
「その考え、僕にも教えてくれないかな?」
「え?」
「共有したいんだ。」
「そうなの?」
「うん。」
「ー銀杏の葉ってどんなのかわかる?」
「ああ、わかるよ。」
「あの葉はなぜああいう形をしていると思う?」
「なぜって…。なんでだろう?昔からそういう形じゃないの?」
私は話す気が失せてしまった。昔からそういう形なのは当たり前だ。私はそれに秘められた想いのことを言っているのだ。
「ねえ、僕は奏美ちゃんの考えていることはちっとも理解できないかもしれないけど、ずっと一緒にいてほしいんだ。結婚してくれないか?」
「え?」
「嫌かな?」
「ー。」
透くんは私の微妙な反応に驚いた様子だったので、こう言い訳した。
「ほら、私、これからどんどん良くなると思うし、まだ、そうゆうのは早いかと思って…。」
「そうだよね、僕が焦りすぎたかな?」
「ごめんないー。」
「奏美ちゃん、僕のこと、好き?」
私はそんな風に聞いてくる男性は好きじゃない。
「なんで?」
「いや、なんとなく…。」
はっきりしない男性も好きじゃない。そもそも、この人を好きかどうかなんてわからない。そんな状態でお付き合いするのは、相手に失礼なのではないだろうか。
「ねえ、もう、終わりにしましょう。」
「えっ!どうして?」
「うんざりしたの。自分に。」
「えぇ!」
「ごめんなさい。」
そう言って、シャンパンをひと飲みすると、席を立ってレストランを出た。
「ああ、すっきりした!」
やっぱり、私は透くんを傷つけてしまった。しかも、最低のタイミングで。
私は一生、一人の人しか愛せないのかもしれない。あまりにも素敵な恋だったから、今でも忘れられない。あの夜景も、海も、音楽も。
私は夜の街を歩いた。ニコラスのセレナーデを想い浮かべながら。涙が出てくる。私は26歳になってもなお、18歳のままだった。なんにも変わっていない。
「月と星のランデブー、結局見たことないな。」
日本に戻ってきて8年、私がどれだけ自分自身のことしか考えていなかったのかがわかった。
「最低ね。」
ニコラスはいつだって幻想の世界に住んでいたから、現実社会に戻った私には遠い存在に感じた。
彼と見た鮮明で美しい景色がたくさん蘇ってくる。多感な時期に触れたものは、その後の人生に大きな影響を及ぼすようだった。
「ニコラス、私たちは、今でも繋がっているでしょうか?」
今夜は満月だった。