冬に響くセレナーデ
14
「奏美さん、今度の日曜日に私の母校で演奏会があるんですけど、一緒に行きませんか?」
真紀ちゃんから連絡があったのは、ロンドン公演の2週間前だった。
「いいですね!曲は何をやるんですか?」
「チャイコフスキーの交響曲第1番です!」
「楽しみにしてますね!」
すごく寒い日曜日、私は真紀ちゃんの母校へ来た。
「奏美さーん!」
彼女と合流して、ホールへ入った。
「音高ってこんな感じなんだ!初めて入ったなぁ。」
「奏美さんは海外の高校出身でしたっけ?」
「そうなの。」
途中で真紀ちゃんの同級生数人と挨拶を交わし、始まるのを待った。
チャイコフスキーの交響曲第1番は『冬の日の幻想』というタイトルが付けられている。
私は学生の頃の自分を思い出していた。私はこの数年間、何をしていたのだろう。
勉強をして、歌手になって、プロポーズを断ってー。
私が過ごしたあの冬の日々は幻想だったのだろうか。
ニコラスは夢だったのだろうか。暖炉であたたまった夕方も、語り合った夜も、
愛に包まれた朝も、すべては儚く散り去ってしまう幻だったのだろうか。
そうだとしたら、悲しすぎる。幻だったとしても、私は音楽を聴く度に彼のことを思い出す。
全部の音に彼の息吹を感じる。感じる心を教えてくれたのはニコラスだ。
彼がいなければ、私は今頃音楽に携わっていなかっただろう。
もう一度逢いたい。逢って確かめたい。あの日々は幻想なんかじゃなかったと。
私たちは確かに存在したということを。
真紀ちゃんから連絡があったのは、ロンドン公演の2週間前だった。
「いいですね!曲は何をやるんですか?」
「チャイコフスキーの交響曲第1番です!」
「楽しみにしてますね!」
すごく寒い日曜日、私は真紀ちゃんの母校へ来た。
「奏美さーん!」
彼女と合流して、ホールへ入った。
「音高ってこんな感じなんだ!初めて入ったなぁ。」
「奏美さんは海外の高校出身でしたっけ?」
「そうなの。」
途中で真紀ちゃんの同級生数人と挨拶を交わし、始まるのを待った。
チャイコフスキーの交響曲第1番は『冬の日の幻想』というタイトルが付けられている。
私は学生の頃の自分を思い出していた。私はこの数年間、何をしていたのだろう。
勉強をして、歌手になって、プロポーズを断ってー。
私が過ごしたあの冬の日々は幻想だったのだろうか。
ニコラスは夢だったのだろうか。暖炉であたたまった夕方も、語り合った夜も、
愛に包まれた朝も、すべては儚く散り去ってしまう幻だったのだろうか。
そうだとしたら、悲しすぎる。幻だったとしても、私は音楽を聴く度に彼のことを思い出す。
全部の音に彼の息吹を感じる。感じる心を教えてくれたのはニコラスだ。
彼がいなければ、私は今頃音楽に携わっていなかっただろう。
もう一度逢いたい。逢って確かめたい。あの日々は幻想なんかじゃなかったと。
私たちは確かに存在したということを。