いとしい傷痕
*
瞼を灼く光の眩しさに、私はゆっくりと目を開けた。
紺色のカーテンの隙間から洩れてくる、真っ白な朝の陽射し。
二回瞬きをして、私は顔を横に向けた。
そこには、裸のままシーツにくるまる愛しい背中。
私はベッドを軋ませないように静かに起きあがり、こっそり覗きこむ。
冷たいほどに整ったきれいな横顔。
朝の光を浴びた彼は、まるでそのまま光に溶けて消えてしまいそうに見えた。
私はベッドから降りて、足音を忍ばせて窓の前まで行き、カーテンを閉めて光を遮る。
部屋のなかに暗闇が戻ってきた。
こうやって、いつまでも夜の檻の中に閉じ込めておけば、彼がずっとここにいてくれるような気がした。
私はベッドに戻り、そっと腰を下ろす。
愛しい背中に指を這わせる。
右の肩甲骨のあたりには、皮膚がわずかに盛り上がり、ひきつれたように細長く歪んでいる部分がある。
これは、傷痕。
私の大切な傷痕。
彼が眠り込んでいるのをいいことに、私はその背中に唇を寄せる。
そして、傷痕にキスをする。
ああ、なんてあまい、あまい傷痕なんだろう―――。