第2巻 Sicario〜哀しみに囚われた殺人鬼達〜
菓子を食べていたシャタムが「あっ!」と声を上げた。
俺とドールは会話を中断し、シャタムへと視線をやった。
「如何した?シャタム...」
「今日、絵画展があるんだった...!」
「へぇ〜絵に興味があるの?今どきの男の子にしては珍しいね。」
絵画展...恐らく俺が描いた絵があるのだろう。
...そうだ。俺は其の為に絵を描いていたんだ。何故今の今まで忘れていたんだ。
呆けていた俺にドールが声を掛ける。
「あの子帰るってよ。」
「あ、あぁ...。そうか...、また来いよ。」
「うん!!今度は友達も連れて来るからな!じゃーね、兄貴!!」
急いで荷物をまとめ終えて、シャタムは家から出て行った。
暗闇のTV、暫くの沈黙が俺とドールの間に流れる。
話そうにも話題は無い。其れ依然に互いに話そうとしない。
初めて会った時から変わらない。
「静かだね...」
「...。」
「君と居る時は何時もこうだ。全然変わらない。」
「...。」
「だけど...、今の君は、静かなのかな?」
悪戯を考える子どもの様に、秘密基地で作戦会議でもするかのように、無邪気を孕んだ笑みで俺に話す。
言葉はねっとりと俺に掛かる。ベタつく汗と同じで気持ちが悪い。
「何が言いたいんだ?」
「君が感じるままで良いのさ...。もし、だよ。君がこのまま“壊れちゃった”ら兄さんは如何思うんだろう?
ボクを怒るのかな?
仕方が無いと言って、ボクに精一杯頑張ったねって褒めてくれるのかな?
セルリアは如何思う?」
「無視するんじゃないのか...。何やったってお前はこのままだし、彼奴もあのままだ。」
この兄弟は変われない所まで来ているのだ。俺が如何なろうとも、変わらない。変えれない。
酷く哀れだ。
《“哀れ”なのは、お前(俺)の間違いだろ。》
声が、響いた___。
「...優遇されてる奴は何時だってそう言うよ。
ねぇ...、君を殺してボクも後を追って死んだら、兄さんは如何思うんだろう?」
《今のお前を見たら“あいつ”は如何思うんだろうな?》
「俺に、聞くな...」
黙れよ。後ろから耳元で“俺”の声がする。心が乱れる。実に不快な声だ。
前からは迫り来るドールが俺に何かを求めている。何かは見当も付かない。付きたくない。
頭が警鐘を鳴らす。激しく、激しく鳴る。
如何してこんなに鳴り響くのか解らない。唯、今のままでは危ない。何がかは解らない。
「冷たいな...セルリア。君は幸せだから、ボクの気持ちなんて、微塵も解らないんだろう。」
《お前には“あいつ”の気持ちなんて微塵も解らねぇーだろ。》
耳を塞いだ。もう声を聞きたくない。そんな思いだからだ。
そんな俺の肩にドールは手を掛けた。
「酷いな...。でも怯える君の姿っては、クるものがあるね。
さっき言ったよね...、ボク男もイケるって...、兄さんに怒られちゃうかな?
ハァ...ボクを殴ったり罵倒を散らしてくれるのかな?」
《今の“俺”は“あいつ”にそっくりな顔立ちだもんなぁ...。良いのか?それで?》
そうだ。今の俺はケビンの姿を借りているだけなんだ。
俺が汚されるんじゃい。ケビンが汚されるんだ。
ケビンは“あいつ”に似ているんだ。生き写しのように。
だから、代わりに守るって決めたじゃないか。
“幸せにする”って...。
“純白”を守らなければ。
「守らな、くちゃな...」
俺の“世界”が緋く染まった。
俺とドールは会話を中断し、シャタムへと視線をやった。
「如何した?シャタム...」
「今日、絵画展があるんだった...!」
「へぇ〜絵に興味があるの?今どきの男の子にしては珍しいね。」
絵画展...恐らく俺が描いた絵があるのだろう。
...そうだ。俺は其の為に絵を描いていたんだ。何故今の今まで忘れていたんだ。
呆けていた俺にドールが声を掛ける。
「あの子帰るってよ。」
「あ、あぁ...。そうか...、また来いよ。」
「うん!!今度は友達も連れて来るからな!じゃーね、兄貴!!」
急いで荷物をまとめ終えて、シャタムは家から出て行った。
暗闇のTV、暫くの沈黙が俺とドールの間に流れる。
話そうにも話題は無い。其れ依然に互いに話そうとしない。
初めて会った時から変わらない。
「静かだね...」
「...。」
「君と居る時は何時もこうだ。全然変わらない。」
「...。」
「だけど...、今の君は、静かなのかな?」
悪戯を考える子どもの様に、秘密基地で作戦会議でもするかのように、無邪気を孕んだ笑みで俺に話す。
言葉はねっとりと俺に掛かる。ベタつく汗と同じで気持ちが悪い。
「何が言いたいんだ?」
「君が感じるままで良いのさ...。もし、だよ。君がこのまま“壊れちゃった”ら兄さんは如何思うんだろう?
ボクを怒るのかな?
仕方が無いと言って、ボクに精一杯頑張ったねって褒めてくれるのかな?
セルリアは如何思う?」
「無視するんじゃないのか...。何やったってお前はこのままだし、彼奴もあのままだ。」
この兄弟は変われない所まで来ているのだ。俺が如何なろうとも、変わらない。変えれない。
酷く哀れだ。
《“哀れ”なのは、お前(俺)の間違いだろ。》
声が、響いた___。
「...優遇されてる奴は何時だってそう言うよ。
ねぇ...、君を殺してボクも後を追って死んだら、兄さんは如何思うんだろう?」
《今のお前を見たら“あいつ”は如何思うんだろうな?》
「俺に、聞くな...」
黙れよ。後ろから耳元で“俺”の声がする。心が乱れる。実に不快な声だ。
前からは迫り来るドールが俺に何かを求めている。何かは見当も付かない。付きたくない。
頭が警鐘を鳴らす。激しく、激しく鳴る。
如何してこんなに鳴り響くのか解らない。唯、今のままでは危ない。何がかは解らない。
「冷たいな...セルリア。君は幸せだから、ボクの気持ちなんて、微塵も解らないんだろう。」
《お前には“あいつ”の気持ちなんて微塵も解らねぇーだろ。》
耳を塞いだ。もう声を聞きたくない。そんな思いだからだ。
そんな俺の肩にドールは手を掛けた。
「酷いな...。でも怯える君の姿っては、クるものがあるね。
さっき言ったよね...、ボク男もイケるって...、兄さんに怒られちゃうかな?
ハァ...ボクを殴ったり罵倒を散らしてくれるのかな?」
《今の“俺”は“あいつ”にそっくりな顔立ちだもんなぁ...。良いのか?それで?》
そうだ。今の俺はケビンの姿を借りているだけなんだ。
俺が汚されるんじゃい。ケビンが汚されるんだ。
ケビンは“あいつ”に似ているんだ。生き写しのように。
だから、代わりに守るって決めたじゃないか。
“幸せにする”って...。
“純白”を守らなければ。
「守らな、くちゃな...」
俺の“世界”が緋く染まった。