溺愛御曹司の罠  〜これがハニートラップというやつですか?〜



「失礼します」
と頭を下げ、再び中に入ると、まだ会議室に昌磨も残っていた。

 びくりとする。

 さ、先程はご無礼を、と思ったが、それを口に出すのも憚られる王子っぷりだったので、そのまま黙る。

 小さく昌磨に向かい、頭を下げた。

「芹沢くん、このあと、仕事つまってたっけ?」

「は? いいえ」
と花音は顔を上げた。

「そうだよねー。
 そうだと思ったー」

 どういう意味ですか、と思っていると、
「飛鷹課長が支局に行くんだけど、付いてって」
と言われる。

「ええーっ。
 なんでですかっ」

「いやー、あそこの松前さん、いろいろうるさいじゃん。
 だから……ねっ」
と肩を叩かれる。

 なにが、だから、ねっ、ですか。

「……課長、最近は、肩叩いただけでも、セクハラなんですよ」

「もう~っ。
 そんなせこいこと言わないで、頼むよ、芹沢くんっ。

 ほら、君、美人だから。
 連れてったら、松前さん機嫌いいから。

 ねっ」

 それでこの間も、松前支局長が来たとき、私にお茶を運ばせましたか、と思った。

 それこそ、セクハラだっ。

 だが、美人とか言われると、いいように使われているとわかっていても、嫌な気持ちはしない。
< 10 / 232 >

この作品をシェア

pagetop