溺愛御曹司の罠 〜これがハニートラップというやつですか?〜
「失礼します」
と頭を下げ、再び中に入ると、まだ会議室に昌磨も残っていた。
びくりとする。
さ、先程はご無礼を、と思ったが、それを口に出すのも憚られる王子っぷりだったので、そのまま黙る。
小さく昌磨に向かい、頭を下げた。
「芹沢くん、このあと、仕事つまってたっけ?」
「は? いいえ」
と花音は顔を上げた。
「そうだよねー。
そうだと思ったー」
どういう意味ですか、と思っていると、
「飛鷹課長が支局に行くんだけど、付いてって」
と言われる。
「ええーっ。
なんでですかっ」
「いやー、あそこの松前さん、いろいろうるさいじゃん。
だから……ねっ」
と肩を叩かれる。
なにが、だから、ねっ、ですか。
「……課長、最近は、肩叩いただけでも、セクハラなんですよ」
「もう~っ。
そんなせこいこと言わないで、頼むよ、芹沢くんっ。
ほら、君、美人だから。
連れてったら、松前さん機嫌いいから。
ねっ」
それでこの間も、松前支局長が来たとき、私にお茶を運ばせましたか、と思った。
それこそ、セクハラだっ。
だが、美人とか言われると、いいように使われているとわかっていても、嫌な気持ちはしない。