溺愛御曹司の罠  〜これがハニートラップというやつですか?〜



 朝、電車でつり革にすがり、また寝ている花音に、拓海が、
「ぐだぐだだな」
と言ってきた。

「朝からそれで、一日持つのか?」

「大丈夫、大丈夫。
 お兄ちゃん、今日、帰るから」

「いい年した兄妹がなにやってんだ」

 夜中になにか叫んでたろ、と言われる。

「あとちょっとで、ドンジャラの決着が着くってときに、お兄ちゃんが盤をひっくり返したからよ」

「……あの人、意外と子供っぽいよな」

 そう言いながらも、拓海が子供の頃から兄のことを尊敬し、後をついて歩いていたのを知っている。

「お兄ちゃんが私を莫迦にしてたから、それに習って、拓海が私を莫迦にするようになったのよね」
と言うと、

「いや、俺は俺の自由意思でお前を莫迦にしているが」
と言ってくる。

「いやー、わからないわよー。
 あんたがお兄ちゃんを崇拝していなければ、今頃、私のことを女神様みたいに崇め奉ってたかもしれないわよ」

 なにを根拠にそんなことを思いつく、と言われた。
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