溺愛御曹司の罠  〜これがハニートラップというやつですか?〜
「花音のマヌケ話がですか」
と言う拓海に昌磨は、

「いや、あのお兄さんがドンジャラをやると言うところが」
と言ってくる。

「昨日、お母さんが、あんた、これもう捨てていい? ってお兄ちゃんに訊いたらしいんですよ。

 そしたら、最後にやるって言い出して」

 でも、あれは捨てそうにないな、と思っていた。

 自分が圧勝するまでやる男だから。

「彼は負けるが勝ちという言葉を覚えた方がいいと思います」
と呟くと、昌磨は笑う。

 ああ、やっぱり、課長の笑顔はいいな、と思う。

 普段、あんまり笑わない人が笑うと、なにかこう、くらっと来てしまう。

 仕事中の課長とは別人のようだ。

 そんなことを思いながら、
「課長、タクシーで来られるのかと思ってましたよ」
と言うと、

「いや、電車の方が速いだろ」
と言うので、ですよねーっ、と機嫌よく同意した。
 


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