溺愛御曹司の罠  〜これがハニートラップというやつですか?〜
「そういえば、昨日は大変だったみたいね。
 書類作り直したんだって?」

「ああ、香穂さん、ちょうど居なかったんですね」

「しかも、他所から回ってくるのが遅れたやつだったんでしょ?」

 災難だったわね、と言ってくるので、
「うーん。
 でもまあ、おかげでなんだかフロア全体の雰囲気が盛り上がりましたしね」

 あれはあれでよかったんじゃないですか? と言うと、

「あんた、とことん、プラス思考ね」
と言ってくるが、いや、そうでもない、と思っていた。

 課長のことに関しては、時折、悪い方にばかり深読みしてしまう。

「……やっぱり、これって、恋なんでしょうかね」

 キスされても逃げちゃったけど。

 やけに不安になるのは、その証拠ではなかろうか、と思っていると、
「なになに。
 聞くわよ、そういう話なら」
と香穂が笑いながら寄ってくる。

「誰にもしゃべりません?」
と振り向き言うと、

「しゃべるわよ」
と素直に言ってきた。
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