溺愛御曹司の罠  〜これがハニートラップというやつですか?〜
 えー、と眉をひそめると、
「なによう。
 課長のことでしょ。

 話しなさいよー。
 なんか進展したの?」
 から始まり、質問攻めにあう。

「なにも進展してないですってば。
 半歩前へ出て、千歩くらい下がった気分です」

 それもあんたらしいわね、と笑うので、
「もう〜、香穂さん、他人事かと思ってー」
と眉をひそめると、

「他人事だもん」
と香穂はあっさり流す。

「でもさ、あんまり考えない方がいいのよ、恋愛なんて。
 失敗したら、また次に行けばいいじゃない」

「結構いさぎよいですね、香穂さん」

 うらやましいなー、と呟きなから、グロスをしまい、出て行こうとすると、
「単純だって言われてるみたいで、なんかムカつくわね。

 あんたにだけは言われたくないから、あんたにだけは」
と言いながら、香穂は追いかけてきた。

 はいはい、と適当な返事をする。

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