溺愛御曹司の罠  〜これがハニートラップというやつですか?〜



 結局、昌磨の車で、少し離れた市にある支局まで行くことになった。

 濃紺の落ち着いたセダンだ。

 おおっ。
 新車の香りっ。

 座席がふかふかだ、寝そうと、思っていると、

「待て、芹沢花音」
と呼ばれた。

 よくフルネームで覚えてたな、と思った花音に、昌磨は、後ろを振り返って言う。

「何故、後部座席だ。
 俺はお前の運転手か」

「あっ、そうですよねっ。
 では、私が運転しましょうか」

「新車なんだ、やめてくれ。
 隣に乗れと言ってるんだ」

 は?

「支局の場所もお前、知ってるんだろう?」

「でも、方向音痴なんで」

 お前、なにしに来た、という顔をされる。

「芹沢、いいのは顔だけか」

「は。
 顔だけでも、お褒めていただいてありがたいですが、うちの親に言わせると、とんだマヌケ面だそうで」
と言うと、昌磨は笑う。

「確かに」
と。
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