溺愛御曹司の罠  〜これがハニートラップというやつですか?〜
「さあ、行くぞ」
と車に乗ってしまう。

 なんだかまずいことを言ってしまったろうか、と思いながら、花音も助手席に戻った。

 フロントガラスからの眩しい日差しに瞬きしながら、缶コーヒーを口にする。

 ひとつ、溜息をついて、

「うーん。
 でも、ちょっと気が重いですね〜」
と言うと、なにが? と言われる。

「かなりセクハラ気味なんですよね、松前支局長」

 ちょっと間があって、昌磨が、
「じゃあ、車で待ってろ」
と言い出す。

 えっ、と花音は助手席から身を起こした。

「いやっ、すみませんっ。
 ちょっと愚痴っただけです。
 
 もちろん、ついて行きますっ!」

「いや、案内してもらっただけで充分だ」
と言ったあとで、昌磨は少し考え、

「……案内はしてもらってないな。
 長距離走る話し相手になってもらっただけで充分だ」
と言いかえる。

 す、すみません、と頭を下げたあとで、花音は言った。

「大丈夫ですっ。
 ついていきますっ。

 私が課長を守りますからっ」

「いや、俺は女じゃないから、襲われないが」
と昌磨は困ったような顔をしていた。
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