溺愛御曹司の罠  〜これがハニートラップというやつですか?〜
「え、なに?」

「お前、あの人の家に行ったことあるのか?」

「うん」

 拓海はそこで、渋い顔をし、
「家まで行ったのに、なにもしてないのか。
 ちょっと同情するが。

 まあ、だったら、別にいいか」
と溜息をつく。

「別にいいかって?」

「わかったんじゃないのか?
 わからないのか?

 ああ、まあ、それだけじゃわからないか」
と拓海は言ってくる。

 なにがなんだか、さっぱりわからないが……と思っていると、拓海はいきなり頰に触れてきた。

 慌てて飛んで逃げると、
「なにもしないよ。
 マヌケ面が可愛かったから」
と言ってきた。

 び……びっくりするよ、拓海。
 私を可愛いとか言うことないから、と思っていると、見透かすように、拓海は笑ってみせる。

「ほらな。
 俺のこと、男として意識することも出来るだろ?

 今までお前が逃げてしまわないように、極力、そういうところは見せないようにしてきたから。

 そうだ。
 だから、よその王子にふらふらっと行ったのかもしれないな」

「突然、あんたらしい都合のいい解釈が始まったわね」

 なんだかいつも通りの展開になってきたような、と思った。
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