溺愛御曹司の罠  〜これがハニートラップというやつですか?〜
「え……」

「母方のお祖母様のところに跡継ぎがなかったとかで、そっちの名字を名乗ってらっしゃるけど、社長の二番目の息子さんなんだよ」

「え、そうなんですか」

 もしや、それで課長なのか? と思ったのだが、どうも違う理由があるようだった。

 だが、支局長は、その理由までは知らないようだった。

「ご無礼のないようにな。
 それから、このことは、みんな知らないから」

 なんであんたがそれを知ってんですか、と思ったが、まあ、ゴマスリのうまい松前支局長のことだ。

 上と呑んでいるときにでも小耳に挟んだのだろう。

「芹沢くん」
と肘でつついてくる。

「君、玉の輿を狙ってみたらどうかね。
 君ならいけるよ」

「は、はあ、ありがとうございます」

 そんな根拠のないこと言われてもな、と思っていると、誰かが肩を抱くようにして、花音を松前から引き離した。

 振り向き見上げると、昌磨が立っていた。
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