溺愛御曹司の罠  〜これがハニートラップというやつですか?〜
「出遅れるな、芹沢」
「あっ、すみません」

「じゃあ、失礼します、支局長」
と昌磨が言うと、

「ああ、帰りは見送るから、声をかけてくださいよ。
 じゃあ」
と満面の笑みで見送られた。

 不気味だ。

 廊下に出て言う。

「あんなに愛想がいいとそれはそれで落ち着かないですね。

 それから、あの、ありがとうございました」

「なにがだ」

「今、助けていただいて」
と言うと、昌磨はなにごとか考えるような顔をしていた。

「……なにか言われたか」
と訊いてくる。

「えっ」

「内緒話をしていたようだが」

 あ、えーと、っと誤魔化そうとしたが、それもどうかと思い、言ってみた。

「あの、課長は社長の息子さんだって」

 昌磨は溜息をついたが、
「それだけか」
と訊いてきた。

「え? はい」
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