溺愛御曹司の罠  〜これがハニートラップというやつですか?〜
「ええっ。
 だって、怖いからです」

 この会社のエレベーターはガラス張りだ。

 街を見下ろしながら、すうっと上がっていく様は、まるで、フリーホールのようで、いつも足許から、ぞわぞわっとする。

 出来るだけ、端から離れたいのだが、なかなかそう上手くもいかない。

 よりにもよって、今日は一番ガラス寄りの位置になってしまっていた。

「だからって、そんな近距離で俺の顔を見なくてもいいだろうがっ」

「すみません。
 混雑してる中、たまたま、目の前にあったので」

「床でも見とけっ」
と成田は赤くなりながら、花音の頭を押さえて、下を向かせた。

 心狭いな、と思ったとき、ちょうど花音たちのフロアに着いた。



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