溺愛御曹司の罠  〜これがハニートラップというやつですか?〜
『こら、待て、花音っ』

 慌てて、腕をつかみ、一緒に降りた。

 酔っ払いというものは、結構帰巣本能があるものらしく、なんとなく家に帰り着いたりするものだ。

 花音もいつも降りる駅で自動的に降りたのだろう。

 だが、まともに夜道を歩けるとは思えなかった。

 途中で、襲われでもしたら困るし。

 昌磨もそこで降り、家まで送ることにした。

 いや、結局は、途中から花音の足が前に進まなくなり、その場にしゃがみ込んで寝そうになったので、背負って歩くことにしたのたが。

「花音。
 お前、俺が居なかったら、どうするつもりだったんだ。

 女が道端で寝るなよ」
と注意すると、

「寝ませんよ〜」
と背中から言ってくる。

「いや、さっき、寝そうになってただろ」

「それはー、課長が居るからです。

 さっき言ったのと同じです。

 安心できると酔いが回っちゃうんですよー」

「……じゃあ、今すぐ道端に捨てようか」

 まっすぐ歩けるようになるだろう、と言うと、
「嫌です」
と言って、きゅっと手に力を込めてくる。

「首を絞めるな。
 他のところを持てっ」

 お前はなにかの妖怪かっ、と親切で背負ってやったのに、息の根を止めようとしてくる花音を睨む。
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