溺愛御曹司の罠  〜これがハニートラップというやつですか?〜
「すみません。
 間違えました」

 肩のつもりだったんですけどねー、とブツブツ言っている。

 間違えましたで殺されたくないな、と思っていると、
「すみません、課長。
 でも、今日は本当にいい日でした。

 あったかいです、課長の背中」
と言ってくる。

「そうか、それはよかったな。
 ところで、本当にこれで道はあってるのか?」

「拓海の家が見えてきたら、あってます」

「……その拓海の家はどんな家だ」

「うちの隣の家です」

「お前の家はどんな家だ」

「拓海の家の……」

「黙れ」
と最後まで言わせなかった。

「実はお前、俺を道に迷わせる妖怪なんじゃないだろうな。

 これ以上間違ったら、めんどくさいから、うちへ連れて帰るぞ」
と言うと、

「いえいえ。
 そんなご迷惑をおかけしては」
と遠慮してみせる。

 いやいや、既に背中に乗ってて、ご迷惑を気にするな、と思った。
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