溺愛御曹司の罠  〜これがハニートラップというやつですか?〜
「おい、ご迷惑以前の問題だろ。

 誰かにそう言われたら、相手のご迷惑を気にするんじゃなくて、まず、身の危険を感じろ」

 お前、良が送ってやろうって言った話にも、素直に乗ろうとしただろう、と注意すると、
「よしよしくんは大丈夫ですよー」
と言ってくる。

 なにを根拠に……。

「課長も大丈夫です。
 課長は、そんなご無体なことはしません」

「俺自身がお前を連れて帰ったら危ないと思ってるのに、お前がなにもしないと言い切るな。

 そんなんだから……」

 おかしなトラウマを作るはめになるんだろうが、と言いかけてやめた。

 傷口をえぐるようなことを言っては悪いかと思ったのだ。

「あのときも大丈夫だと思ったんですけどね〜」
と花音は恐らく、そのときのことを思い出しながら、呟いている。

「絶対大丈夫なはずの人だったんですよ。

 あ、そこです、うち。

 きっと近くに拓海の家もあります。

 ね?
 間違わなかったでしよ」

「言ってることは相当おかしいけどな」

 花音といえども、ずっと背負って歩くと、重い。

 やれやれ、と思いながらも、花音のぬくもりが消えるのが少し寂しくもあった。

 花音の家はそれなりに大きな家だったが、外灯がまだついていたせいか、なんだかぬくもりを感じる家だった。
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