溺愛御曹司の罠  〜これがハニートラップというやつですか?〜
「着いたぞ、花音」

 花音に言われるまま、玄関まで行き、チャイムを押す。

 しばらくして、
『はい』
と男の声で返事があった。

 若い男だ。

 兄貴だろうか。

 ちょっと緊張する。

 普段は女よりは同性の方が緊張しないと思うのに、こういうときは、逆のようだった。

 ドアが開き、男が顔を出した。

 なるほど、花音とよく似ている。

 花音はドアが開くまでに、のそりと下に降りていた。

「お兄ちゃん、ただいま帰りました。
 まだ居たの?」

「……妹も彼氏ができると、途端に冷たくなるな」

 ノブを握ったまま、花音の兄はそう呟いていた。

「違うよ。
 お兄ちゃんが居てくれて嬉しいんだよ。

 でも、花札はもうやらないからね」

 まともに会話しているように聞こえるのだが、さすがは、兄、

「お前、相当酔ってんな」
と言う。
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