早く俺を、好きになれ。
「おう!サンキューな!マジでやる気がみなぎって来た!」
虎ちゃんは目を細めてニッと笑う。
そして、私の頭をポンと撫でた。
「マジで頑張るから、俺」
「うん」
「俺だけ見てて」
私の耳元に顔を寄せて、虎ちゃんは小さく囁いた。
「と、虎ちゃん……近いから」
なぜかドキッとして、とっさに虎ちゃんから離れる。
こういうことをするから、みんなに付き合ってるって勘違いされるんだよ。
否定しても信じてもらえないのもムリないよね。
「じゃあ上で観てるから」
「あ、おい」
踵を返そうとした私の手を、虎ちゃんの大きな手が引き止める。
「なに?」
思わず顔を見上げると、心なしか虎ちゃんの顔が赤いような気がして。
熱でもあるのかな?
体調悪い?
心配になった。
「マジでサンキューな。帰り、一緒に帰ろうぜ。試合が終わったら反省会があるけど、待っててくれる?」
かしこまって話す姿。
力強くてまっすぐな瞳。
私の腕を掴む虎ちゃんの手から緊張感が伝わって来る。
「仕方ないなー!待っててあげるから、試合頑張ってね!」
どことなく真剣な雰囲気を醸し出す虎ちゃんに、出来るだけ明るく笑って答えた。
「おう!じゃあ行って来る」
「うん」
虎ちゃんに手を振ってギャラリーに戻ると、トイレに行っていた蘭がすでに座っていた。