早く俺を、好きになれ。
斎藤 小次郎(こじろう)。
虎ちゃん同様、明るくてかなりのお調子者。
派手な茶髪で制服を着崩していて、顔もかなりのイケメン。
人気者だけど、チャラくて彼女を取っ替え引っ替えしてるってのが唯一の難点。
可愛い子に告白されたらすぐに目移りして、二股三股は当たり前なんだとか。
甘いマスクを武器にして、女子をたぶらかしまくってる最低男。
私の中の警戒レベル5の要注意人物。
私の知る限りでの斎藤君情報は、ザッとこんな感じ。
どう考えても最低だけど、あくまでもウワサだからどこまで本当なのかはわからない。
それでもクラスではムードメーカー的存在、かつ盛り上げ役。
「えー、俺?ムリッすよ、部活あるんで」
ムリムリと手で大げさに否定する斎藤君。
「うーん……そうだなぁ。うちのクラスは、バスケ部の男子が多いもんなぁ。そうなると、部活に入ってない奴の方が都合がいいか」
なんて理不尽なことを言いながら、先生が教室の中を再び見回す。
目が合わないように、下を向いてやり過ごそう。
「あ、お前はどうだ?武富」
先生が次のターゲットを見つけた。
しかも、武富君と来たもんだ。
自分の名前が呼ばれたわけでもないのに、なぜかドキドキが止まらない。
武富君がやるなら……私もやってもいいかな、なんて。
「俺っすか?」
「ああ、お前確か帰宅部だよな?」
「まぁ、はい、そうですけど」
「頼む、やってくれないか?ここはひとつ、俺の顔に免じて」
お手上げだとでも言うように、先生が武富君に押し付けようと必死。