早く俺を、好きになれ。
「はぁはぁ……っ」
つ、疲れた。
久しぶりの全力疾走はかなりキツい。
図書室のドアを開けて中を覗き込む。
カウンターのところには図書委員らしき人が座って本を読んでいた。
中には勉強をしに来ている人や本を探している人の姿がある。
私は息を整えてからゆっくり足を踏み入れた。
あ……武富君。
姿勢良く立っている後ろ姿を見つけて鼓動がドキンと跳ねる。
武富君は本を探しているわけでもなく、勉強をしているわけでもなく。
窓際に立って外の景色を眺めていた。
「武富君」
「え?あれ、市口さん。どうしたの?」
私の声に驚いたように振り返った武富君。
「借りてた小説を返そうと思って」
カバンから出して武富君に渡す。
「明日で良かったのに」
「なんか急に思い出しちゃって」
「そっか。わざわざありがとう」
武富君は明らかに元気がなくて、目が全然笑ってない。
ムリをしているのがすぐにわかった。