早く俺を、好きになれ。
思えばここ最近、武富君はあんまり笑わなくなったかもしれない。
学校に来ても小説を読まなくなったし、ぼんやり考え込んでいることが増えたようにも思う。
「何かあったの?」
些細なことが気になる。
武富君だから、気になる。
好きだから……力になりたいって思う。
そんな顔は似合わないよ。
武富君には笑顔が1番なんだからさ。
私の言葉に武富君は驚いたように瞳を揺らした。
「武富君、最近ぼんやりしてるでしょ?小説も読んでないし、何か悩み事でもあるのかなーって気になっちゃって」
「心配してくれてたんだ?ありがとう、大丈夫だから」
そうは言うものの、声には覇気がなくて大丈夫だなんて思えない。
でも、武富君がそう言う以上は突っ込んで聞けるはずもなく。
私は「そっか」とだけ返した。
だけどその場から動けなくて、武富君と同じように外の景色を見下ろす。