早く俺を、好きになれ。
洗い物をする音を聞きながら、ソファーに1人落ち着かないまま座っていた。
しばらくすると、オーブンからいい匂いが立ち込めてクッキーが焼けたんだとわかった。
「紅茶淹れるね。あ、こっち座っていいよ」
ダイニングから私を手招きして、洗い物を終えた織田さんがニコッと微笑む。
私は静かに立ち上がって、ダイニングのイスに座った。
その時。
ーーガチャ
「ただいまー!あ、帰ってたんだ。いい匂いがする〜!」
リビングのドアが開いて、大人っぽい綺麗な女の人が入って来た。
「愛ちゃん、お帰り。早いね。クッキー作ってたの」
「へえ。クッキーか。お友達と?どうも、柑菜の姉の愛菜(あいな)でーす」
スキニーのジーンズと白のワンポイントのTシャツを着た織田さんのお姉さんは、私を見て軽く会釈してくれた。
「あ、ど、どうも。お邪魔してます!」
私もつられて会釈する。
織田さんって、お姉さんがいたんだ。
それにしても、綺麗な人。
オシャレで、すごく大人っぽい。
「かしこまらないでね〜!柑菜が友達連れて来るなんて珍しいから、嬉しくなっちゃった!ゆっくりしてってね」
織田さんとはタイプが違った明るい系のほんわかした美人さん。
優しくて思いやりがありそうな人だった。
「ありがとうございます」
「いえいえ〜!クッキーといえば、颯太を思い出すなー。奴のことが好きで必死だったもんね。懐かしい〜」
お姉さんは私の向かい側のイスに座った。
そして「私も紅茶ちょーだい」と、織田さんに向かってお願いしている。