早く俺を、好きになれ。
苦しそうに絞り出された声に、愛菜さんも私も動きを止めた。
それと同時に、武富君の寂しそうな顔を思い出して胸が締め付けられる。
だけど織田さんを見ていると、未練たっぷりなのが手に取るようにわかってやるせなくなった。
「え?別れたの?どうして?」
愛菜さんが恐る恐る口を開く。
さっきまでのふざけたような感じではなく、とても真剣だった。
「私の……せいなの。私をかばったせいで……大成が事故に遭って……っサッカーをやめることになったから」
みるみるうちに織田さんの目が潤んでいく。
「本当は私、大成がサッカーに未練があることを知ってた……っ。毎日図書室から練習を見てるのも知ってる。ツラそうな大成を見てたら、自分のことがどうしても許せなくて……」
織田さんが手で涙を拭う。
それでも話すのをやめなかった。
きっと、ずっと苦しんで来たんだろう。
「大成と一緒にいると……罪悪感に押し潰されそうで。ツラくて……逃げちゃった。私から……振ったの」
そう言って泣く織田さんの背中を、愛菜さんが優しく撫でる。
「何度も言ってるじゃん。あの事故は柑菜のせいなんかじゃないって」
「ううんっ。私の……せいだよ。私をかばったせいで……大成の足は……ダメになっちゃったんだからっ」
織田さんは、そのことをずっと気にしてたんだ。
ただただ幸せな2人に見えたのに、そんなことがあったなんて。
私はどうすればいいのかわからず、ただじっとクッキーのマーブル模様を見つめていた。