早く俺を、好きになれ。
そうしないと武富君の前で泣いてしまいそうで、必死に歯をくいしばる。
「さ、さぁ!全部忘れて……ダ、ダンボール……取りに行こっか」
「忘れないよ」
歩き出そうとした私の耳に武富君の真剣な声が聞こえた。
背を向けているから表情は見えない。
でも、真剣に私に向き合ってくれているのがわかる。
「市口さんが必死になって告白してくれたのに、忘れられるわけないだろ?」
「……っ」
胸がズキッと痛んだ。
武富君はどこまでもズルい。
そんな風に言われちゃったら……もっと、好きになっちゃうじゃん。
「ビックリしたけど、市口さんのまっすぐな気持ちは嬉しかった」
目の前がボヤけて視界が歪む。
振り返って顔を見られたら確実に泣いちゃうから……涙を乾かさなきゃ。
「だからこそ、きちんと返事がしたいんだ」
「…………」
「ごめん。俺は柑菜が好きだから、市口さんの気持ちには応えられない」
「……っ」
その言葉を聞いた途端、胸に激しい痛みが走った。
わかってる。
わかってた。
武富君の返事は。
なのに、それを突きつけられて胸が張り裂けそう。
直接言われるって……かなりキツい。
ガマン出来なくて涙が流れた。