早く俺を、好きになれ。
「気にしなくていいって言ったのは俺なんだし、咲彩が謝る必要ない」
「でも、それでも……はっきり言わなきゃ悪いから。武富くんに告白して、虎ちゃんの気持ちがよくわかった。ちゃんと振られなきゃ、前に進めないってことも。……ごめん、だから……虎ちゃんとは付き合えない」
そのあと、しばらく沈黙が流れた。
「ははっ……わかってはいても、実際に言われるとかなりキツいな」
乾いたその声には、どこか諦めにも似たものが含まれていて。
いつもはイジワルに笑っている虎ちゃんが、悲しげに瞳を揺らしている。
虎ちゃんの気持ちが痛いほどわかるから、胸が苦しくて仕方ない。
「ごめんね、虎ちゃん。そんな顔……しないで」
もう、やめるから。
苦しめることはしないから。
「私、強くなってみせるから。もう泣かないよ。今までごめんね、ありがとう」
別れの言葉なんかじゃないのに涙が溢れそうになる。
ごめんね。
何度言ったって足りない。
私は黙り込む虎ちゃんに背を向けて歩き出した。
虎ちゃんがどんな顔をしているかが想像できて、顔を見ることができなかったの。
いつも私を助けてくれた虎ちゃん。
ツラい時も苦しい時も、虎ちゃんの優しさに救われていました。
そんなキミには心から笑っていてほしいから、苦しめることはしたくないんだ。