早く俺を、好きになれ。
距離
それから2週間が経った。
学校祭のあとに席替えをして、虎ちゃんや叶ちゃん、武富君とは席が離れてしまった。
「叶ちゃーん……英語の宿題やった?」
教室に着くやいなや、私は叶ちゃんの元に一目散に向かって泣きつく。
清々しい朝の空気が一瞬で騒々しくなったのは、ついさっきのこと。
昇降口でクラスの子が英語の宿題のことを話しているのを聞いてしまったから。
「やったけど。咲彩、もしかして忘れたの?」
「うん、うっかりしてて」
「昨日も数学の課題忘れてたよね?」
うっ。
よく覚えていますこと。
「最近うっかりしすぎじゃない?」
フランス人形のような叶ちゃんのクリクリお目めが、まっすぐに私の心を突き刺す。
「申し訳ございません……」
叶ちゃんは小さくため息を吐き出しつつも、机の中から英語のノートを出して渡してくれた。
「何かあった?悩みごと?」
「ううん、何もないよ」
そう、なにもあるはずない。