早く俺を、好きになれ。


「ホントに?」


「うん。特に思い当たることは何も」



それなのに、なんでこんなにも心が晴れないんだろう。


まるでポッカリ穴が開いちゃったみたい。



「わ、もう時間ないじゃん!写したらすぐに返すから!」



逃げるように叶ちゃんの元から自分の席に戻ってノートを開いた。


必死になって黙々と叶ちゃんの綺麗に書かれた英文を写す。



「市口さん」



必死にノートに向かっていた私の元に影が落ちて来た。


見上げると、爽やかに笑う武富君が私を見下ろしている。



「あ、おはよう!どうしたの?」


「おはよう。市口さんに報告したいことがあって」



武富君が照れたように頬をかく。


その顔は少しだけ赤くなっていた。


それを見て何を言われるか予測できた。



「柑菜とヨリを戻すことになったんだ。市口さんが背中を押してくれたおかげだよ、ありがとう」


「ううん……私は何も。でも、よかったね」



胸が痛んだけど、もう涙は出ない。


武富君の幸せそうな顔を見て、これでよかったんだって心の底から思えた。


そう思えるってことはやっぱり、叶ちゃんの言うように私も前に進めてるんだよね。


ちょっとずつ、ちょっとずつ。


周りの状況が少しずつ変わってく。


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